野口整体 金井蒼天(省蒼)の潜在意識教育と思想

金井省蒼(蒼天)の遺稿から説く「野口整体とは」

2020-01-01から1年間の記事一覧

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長一 3

「感情を言葉にできない」と自分のことを考えることができない ― 感情のやり取りを通じて進む心理療法 心理療法の視点からは、対話を通じての(本人の)「感情への気づき」が、閉ざされた潜在意識を開く鍵となるのです(悩みの核心を打ち明けることは脳の働…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長一 2 

知性と情動の一体性が失われている現代人 師野口晴哉は潜在意識、ユングはコンプレックスという言葉で、無意識(意識できない心)を明らかにしてきました。 「整体(整っている体)」とは、「良い空想ができる身体」であり、自発的な意欲に支えられた身心で…

第六章 生き方を啓く整体指導― 感情の発達と人間的成長一 1

一 整体となるために必要な感情の発達― 内界との調和を目指す個人指導 今回から、第六章に入ります。健康と情動の停滞(ストレス)の関係についてこれまで述べてきましたが、この章では、心の成長はどういうことか、どうすれば心は発達するのか?そして個人…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 三(補2)

(補足2)金井省蒼(蒼天)先生が捉えていた野口整体の宗教性 金井先生が亡くなる直前の原稿にはありませんが、前年の原稿にはこの指導例の後に鈴木大拙『禅とは何か』(春秋社)からの引用が入っていました。 これについての文章はないのですが、金井先生…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 三(補1)

補足1 Iさんの指導例のまとめ 先生が亡くなる直前の原稿にはないのですが、Iさんの指導例としてまとめた原稿の中にあった内容を転載し補足とします。 これは、このIさんの指導例のまとめとなる部分です。 「感情」に対する「身体的取り組み・正坐」がもたら…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 三6

今回はIさんが「なぜ感情を内攻させるのが常態化するようになったのか?」が主題です。 今回、宗教的な教えが自動的に感情を抑圧する要因になった、という話が出てきますが、このような例は意外と多く、宗教もキリスト教系、仏教系、新興宗教、伝統宗教さま…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 三5

一般にストレスというと「○○が原因でストレスを感じる」と、外的要因とそれに対する反応、と考えるものです。これが科学的なストレスの考え方(ストレス理論)であり、そういう理解が一般的なのですが、それだけでは自分の問題というのが見えにくくなってし…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 三4 

生前、金井先生は、塾でIさんの指導から「精神的な腰」についての話をしたことがありました。 腰というと、一般に生理・解剖学的というか、肉体的な意味での腰というものしか知らなくて、それが痛いとか歪んだとか言っているだけのことが多い。 腰というのは…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 三3

第四章までに述べた情動と偏り疲労についての内容を少し復習しておきましょう。 野口整体で説く「要求を中心とした生活」を実現していくためには、体を整え、感覚を正常化する必要がありますが、そこで障害になるのが、意識できない情動の停滞です。 この情…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 三2

今回の焦点となる味覚は、生理学的に言うと「外界感覚(外受容感覚)」という外界を知覚する感覚(五感)のひとつです。食物の異化作用・同化作用と密接に関わり、体調によって鈍りが起きやすいことは、経験的に良く知られているかと思います。 この味覚を正…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 三1

三 情動に着目する心療整体― Iさんの指導例 今回から、金井流整体個人指導の心身医学的解説とも言うべき、指導例を用いた内容に入ります。 今回紹介するIさんは、金井先生の指導を受けていた人の中ではお世辞にも優等生とは言えない人!なのですが、先生か…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二8

「内界への適応」の大切さを説いた池見氏 ― 野口整体は「潜在生命力の喚起」による人間的な成長を目標とする 池見氏が目指した心身症の治療の第一は、4から表してきたこのような病状への理解と「心身相関」への気づきを促すことです。 池見氏は「新しい皮質…

よみうりカルチャー講座 はじめての野口整体 のお知らせ

7月28日(日)から、よみうりカルチャー八王子で身体感覚を高める修養(はじめての野口整体)の教室を始めます。前回告知の後、新型コロナウイルス予防の関係で、よみうりカルチャーが前項休校となってしまいましたが、再開しました。 この講座では、活元運…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二7

身体感覚と恒常性維持機能 野口整体では、整体であるため、身体感覚を高めることを専らとするのです。感情に対する自覚と身体感覚の敏感さは一つのことで、これは経験則からの確信です。 師野口晴哉が説いたことを一口で表すと「整体を保って全生する」こと…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二6

今回は野口整体で言う「鈍り」の問題である失体感症(アレキシソミア)についてです。 身体感覚と情動についてはこれまでも紹介してきましたが、池見氏提唱の「アレキシソミア」には、感情の言語表現に注目する欧米とはまた違う、東洋的な心の理解が表れてい…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二5

今回は、心身症になりやすい人の傾向とされている「アレキシサイミア」についてです。 池見氏が失感情症と訳して紹介したアレキシサイミアは、感情がないのではなく、「感情として表現することができない」という意味をはっきりさせるため、現在は「失感情言…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二4①

心身症と陰性感情― セリエのストレス学説 野口晴哉先生は、セリエのストレス理論を「上下型2種の病理をほぼ完全に説明している」と述べています。しかし、「こうも頭で生きる人が増えてしまった」(野口晴哉)現代においては、このストレス理論はより普遍的…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二3

今、新型コロナウイルス感染症の問題で、免疫力を高める食べ物などに関心が集まっています。 「ストレスや心配事は免疫機能を低下させる」と一般にもよく言われることですが、これを科学的に研究することは脳科学と免疫学を統合する必要があり、非常に難しい…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二2②

前回の続きで、心身医学がぶつかった壁についての内容です。 現在、心身医学の世界では一人の医師が体と心の両面から、一人の人間をまるごと診るというやり方ではなく、各専門医と心理療法の専門家がチームで行うという方法が取られている様です。 池見氏も…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二2補足 心身一体と魂の不滅はなぜ矛盾するのか

ライサー氏の心身観にある宗教的背景 ライサー氏の「心身一体の考えに徹することは、不死への望みを断ち切ることになる」というところはちょっと分かりにくく、生前、金井先生も理解しきれないところがあって、このように思うのはなぜだろう?と何度か話題に…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二2①

①東西の医学の出会い― 西洋思想「心身二元論」の壁 池見氏は1977年9月、京都国際会議場で第四回国際心身医学会が開かれた際、組織委員長を務めました。 氏は、当時の学会会長であるアメリカのライサー氏(エール大学教授)の開会講演「東西の医学の出会いの…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二(補)

心身一如の医学と死生観 本文中にある引用ですが、長いので補足資料扱いとします。 池見酉次郎氏は『人間回復の医学』(創元社)で、次のように述べています。 第一章 まるごと健康からの再出発 私どもは、三〇数年前から、…現代医学の在り方に対する反省と…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二 1②

一で述べたように、アメリカやヨーロッパでは心理療法家や医師が、情動に関わる障害を治療する方法として東洋の身体行に注目し、研究がすすめられてきました。 近年では、ヴィッパサナ瞑想をメソッド化したマインドフルネス瞑想が、FacebookやGoogleなどの大…

第五章 野口整体と心身医学の共通点 二 1①

二「抑圧感情」を病理として認める心身医学が求められる現代 ― 池見学が裏付ける金井流心療整体の心身医学的根拠 二で取り上げる池見酉次郎(ゆうじろう)医師は、日本の心身医学のパイオニアです。患者を自宅に泊まらせるなど、自分のすべてをぶつけて向き…

第五章 野口整体と心身医学の共通点一10②

体の外側(体表)から観察することの意味 フロイトは、「自我」という心のはたらきは皮膚に基盤を持っていると考えていました。生まれたばかりの赤ん坊は、最初は母親に抱かれた時の一体感を皮膚感覚を通して感じます。その後、自分と母親が分離した存在であ…

第五章 野口整体と心身医学の共通点一 10①

①内臓に注目する西洋医学・体壁に注目する東洋医学 解剖学者・三木成夫(1925年生)は、人間の体を内蔵系と体壁系(体癖ではない)の二つに分けました。これは古代ギリシアのアリストテレス以来の大別のしかたでもあり、これをまとめると次のようになります…

第五章 野口整体と心身医学の共通点一9

現代人の心の問題を考えた深層心理学者は東洋の瞑想法の意義を捉えた 湯浅氏は『気・修行・身体』(第一章 東洋的身心論と現代 7)で、心身相関的見方を開拓した西洋の深層心理学者や精神医学者の中で、東洋の宗教的修行法(身体技法としての瞑想法)に関心…

第五章 野口整体と心身医学の共通点一8②

人間の「精神的成熟」を目的とする東洋の修行法 ― 呼吸法の訓練をする瞑想法は自律系機能との対話 (金井) 哲学者である湯浅氏は、現代の神経生理学の立場から、「人格の向上とは、より深い無意識の感情のはたらき・愛や慈悲というものが意識に表れてくるこ…

第五章 野口整体と心身医学の共通点一8①

人間の「精神的成熟」を目的とする東洋の修行法 ― 呼吸法の訓練をする瞑想法は自律系機能との対話 金井先生は生前、「修行」という言葉の意味が通じなくなった…とよく言っていました。それが、未刊の原稿の内容に取り組む動機になったのですが、それは身体の…

コラム 骨盤の前後運動の可動性を高める

骨盤の前後運動の重要性 これまで、運動系の問題を自律神経が支配する領域と関連付けた観方というのは、学問的にはあまりされてきませんでした。 しかし近年、ヒラメ筋というふくらはぎの内部にあって重力を受け止めている筋肉が緊張すると、感覚神経ととも…